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【2026年版】アメリカの小学校STEM教育の実態と日本との差|構造的な違いを徹底比較

【2026年版】アメリカの小学校STEM教育の実態と日本との差|構造的な違いを徹底比較

「アメリカではSTEM教育が進んでいると聞くけど、実際どうなの?」

私の知人がアメリカ・カンザス州に住む親族の子どもたちの様子を聞いてきました。地元の小学校ではSTEM専用の教室に移動して授業を受ける時間があり、日本の学校とはずいぶん違う印象を受けたというのです。

ただ正直に言います。「アメリカでは当たり前に週2回のSTEM授業がある」というのは、正確ではありません。調べてみると、アメリカの実態は思ったよりも複雑で、日本と同様に格差や課題が大きく存在していました。

この記事では、アメリカの小学校STEM教育の「実態」をデータで正直に示した上で、それでも日本との間に存在する構造的な差の正体を掘り下げます。「アメリカの先生も大変なはずなのに、なぜSTEMが機能しているのか」という疑問にも正面から答えます。

アメリカの小学校STEM教育の実態【データで正直に見る】

まず前提として、アメリカの教育は州・学区・学校によって大きく異なります。日本のように国が学習指導要領で一律に定める仕組みとは根本的に異なるため、「アメリカ全体の平均」を語ることには注意が必要です。

コンピュータサイエンスを提供している小学校は26%のみ

アメリカでSTEM教育が進んでいるというイメージとは裏腹に、現実には大きな格差が存在します。Education Week「STEM Instruction: How Much There Is and Who Gets It」によれば、コンピュータサイエンスの授業を提供している小学校は全米で26%にとどまります。中学校(38%)、高校(53%)と学年が上がるにつれて割合が増えますが、小学校段階では4校に3校はコンピュータサイエンスを提供できていないのが現実です。

理科の授業についても、「毎日または週のほとんど」実施しているのはK-3(低学年)で17%、4-6年生で35%にとどまります。STEM教育の本場とされるアメリカでも、小学校段階では実施状況に大きなばらつきがあります。

STEMラボがある学校では「週1回〜数週間に1回」が実態

では、STEM教育に積極的な学校ではどうなっているか。All Things Science「What Is a STEM Lab?」によれば、STEMラボを持つ学校の多くはローテーション制を採用しており、各クラスがSTEMラボを訪れる頻度は「週1回」「週2回」「数週間に1回」と学校の体制によってさまざまです。

つまり、カンザスの小学校で見られたSTEM専用の時間というのは、STEMラボや専任スタッフを持つ学校では実現している取り組みですが、これがアメリカ全体の「当たり前」ではありません。実施している学校では週1回程度が標準的なモデルと言えますが、そもそもそうした環境のない学校が多数存在するのが実態です。

STEM教育の「格差」はアメリカも深刻

さらに深刻なのは、STEM教育へのアクセスに経済格差が直結していることです。前述のEducation Weekの調査では、経験の浅い教師ほど高貧困地区の学校に集中していることが示されています。STEMラボや専任スタッフを持てるのは、資金力のある学区や学校が中心です。

PublicSchoolReview「The Rise of STEM in Public Schools: 2025 Update」(2025年)によれば、2024年時点でアメリカの成人のうち「K-12のSTEM教育が他の先進国と比べて高水準だ」と評価しているのはわずか28%にとどまります。アメリカ国内でも、自国のSTEM教育に懐疑的な見方が多数派なのです。

それでもアメリカのSTEM教育が日本より「機能している」構造的な理由

全体的な格差はあるものの、STEM教育に積極的な学校がしっかりと機能できる仕組みがアメリカには存在します。日本との構造的な差は3点に整理できます。

第一に、国家戦略としての継続的な予算投下です。miraii「STEM教育とは?」によれば、オバマ政権は2015年度だけでSTEM教育関連予算として29億ドルを投じ、2018年発表の「STEM教育戦略」では連邦省庁の複数機関から約30億ドルが投資されています。さらに2024年11月にはホワイトハウスが「2024-2029年連邦STEM戦略計画」を発表し、K-12のSTEM・コンピュータサイエンス教育の質・アクセス・公平性の向上を継続的な国家目標に位置づけています。日本のGIGAスクール構想がハードウェア(端末)整備に重きを置いたのとは対照的に、アメリカは教員育成・専任人材確保・カリキュラム開発に継続して投資しています。

第二に、学校単位での採用権限です。アメリカでは各学校が独自に教員を採用します。STEM教育に力を入れたい学校は、STEM専任スタッフを独自に雇うことができます。日本のように都道府県単位で一括採用・転勤という仕組みではないため、学校の方針が人材配置に直接反映されます。

第三に、STEMを「独立した活動」として設計できる柔軟性です。日本のプログラミング教育は算数や理科に組み込む形が前提ですが、アメリカではSTEMラボという独立した空間と専任スタッフを用意することで、既存の授業体系を変えずにSTEM教育を追加できます。担任の負担を増やさずに専門的な学習機会を提供できる、この柔軟性が機能しています。

アメリカの教師も過酷——それでもSTEMが動く理由

「アメリカの先生だって大変なんじゃないの?」という疑問は正直な問いです。答えは——はい、大変です。実はアメリカの教員問題は日本より深刻な側面もあります。

神戸新聞「アメリカでも先生不足→週4日登校・教科の削減で対策」(2023年)によれば、2022年10月時点でアメリカの公立校の45%が1人以上の教員不足の状態にあります。特にコンピュータサイエンスを担当できる教員の不足は深刻で、Education Weekの調査では高校のコンピュータサイエンス教師のうちその分野の学位を持つのは4人に1人程度にとどまっています。

アゴラ「アメリカの学校で教師が消えていく恐るべき事情」(2022年)では、眠れず食事もままならないまま1日13時間働き退職を決めた教師の実態、アイスクリーム屋やウーバーイーツを掛け持ちして生計を立てる教師の状況が報告されています。

それでもSTEM教育が一部の学校で機能しているのは、「担任が全部やらなくていい」という役割分担の構造があるからです。STEMラボの専任スタッフが授業を担うため、担任は担任の仕事に集中できます。日本のように担任一人がプログラミングも道徳も体育も運動会の準備もすべて引き受ける構造とは根本的に異なります。教員全体が疲弊していても、役割が分かれていれば専門的な学習は動き続けられる。これが日本との決定的な設計の違いです。

日本のプログラミング教育が年1〜2回にとどまる構造的な理由

日本はプログラミング教育を「独立した教科」として設計しませんでした。算数や理科の授業の一部として組み込む形を選んだ。この設計が、専任教師も専用予算も専用時間枠も生まれにくい構造を作っています。

文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(2023年)によれば、プログラミング教育の実施頻度には学校間で大きなばらつきがあり、年に1〜2回しか実施できていない学校が多数存在します。

アメリカでもSTEM教育の格差は深刻ですが、積極的な学校が専任スタッフと専用ラボで週1回程度の継続的な実施を実現できる設計上の余地があります。日本では意欲ある学校でも「担任に任せるしかない」という構造的な制約があり、現場の先生が多忙である限り実施頻度を上げることが難しい状態が続いています。

STEM教育の差が小学生の将来に与える影響をデータで見る

「年1〜2回と週1回の差」は、子どもの将来にどんな影響を与えるのでしょうか。

週1回のSTEM授業を小学1年生から6年生まで続けると、6年間で200回以上の学習機会があります。年2回なら12回。同じ「必修化」という言葉で語られていても、実態の積み上げには大きな差があります。

International Journal of STEM Education(2020年)の研究では、週1回程度の短い時間でもコンピュータサイエンスに触れた小学生は、そうでない生徒に比べてCSへの関心が有意に高まることが示されています。「継続的な小さな積み重ね」が、将来のSTEM分野への関心と進路選択に直結するのです。

世界経済フォーラム「仕事の未来レポート2023」では、2027年までに最も重要なスキルとして「分析的思考」「技術リテラシー」「創造的思考」が挙げられています。これらを育てるには、年に数回の体験では足りません。

エンジニア経営者が現場で見た「静かに広がる格差」の正体

私が教育行政の担当者と話をしていたとき、こんな言葉が出てきました。「本当はもっとやりたい。でも予算も、先生の時間も、仕組みも追いついていない。」その方は悔しそうな表情でそう言っていました。

くむすたの教材を試験導入した小学校を訪問したとき、5年生の男の子が初めてScratchでキャラクターを動かした瞬間、「なんでこれ、学校でやらないの?」とつぶやきました。その子は特別な子ではありません。ゲームが好きで、算数が少し苦手で、でも「なんで動くの?」という好奇心だけは目を輝かせていた。

アメリカでも格差はあります。しかし、STEM専用ラボと専任スタッフを持つ学校では、その好奇心に週1回応える仕組みが制度として存在します。日本では、その仕組みを持つ学校がまだ極めて少ない。どちらの子どもも同じ可能性を持っています。でも、与えられた環境が違う。

格差は「事件」として起きるのではなく、毎週の積み重ねの差として、じわじわと、気づかないうちに広がっていきます。

よくある質問(FAQ)

Q. アメリカの小学校ではSTEM授業が週何回あるのですか?

A. 学区・学校によって大きく異なります。STEMラボを持つ積極的な学校では週1回程度の実施が多く見られますが、全米の小学校のうちコンピュータサイエンスを提供しているのは約26%にとどまります。「週2回が当たり前」ではなく、実施できている学校とそうでない学校の格差が非常に大きいのが実態です。

Q. STEM教育とSTEAM教育の違いは何ですか?

A. STEMはScience(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)の4分野を指します。STEAMはそこにArt(芸術・教養)を加えたもので、創造性や表現力も含めた統合的な学びを重視します。アメリカでは2017年のSTEM教育法改正以降、STEAMとして推進されています。

Q. アメリカの先生も労働環境は大変ですか?

A. はい、大変です。2022年時点で全米の公立校の約45%が教員不足の状態にあり、給与の低さから離職率も高い状況です。ただし日本との大きな違いは役割分担にあります。STEM専任スタッフが授業を担当することで、担任の負担を増やさずにSTEM教育を実施できる仕組みを持つ学校があります。

Q. 日本のプログラミング教育が年1〜2回にとどまる最大の理由は何ですか?

A. 最大の理由は設計の問題です。日本のプログラミング教育は独立した教科ではなく、既存の算数・理科の授業に組み込む形をとっています。専任教師も専用の時間枠も専用の予算も生まれにくい構造のため、多忙な担任に任されたまま実施頻度が上がらない状況が続いています。

Q. 民間のプログラミングスクールで補うことは有効ですか?

A. 現実的かつ有効な選択肢です。学校のプログラミング教育が年1〜2回しかない現状では、週1回の継続的な学習機会を民間スクールで補うことが、学習の積み上げを作る最も現実的な方法です。研究でも週1回程度の継続的な接触がSTEMへの関心を高めることが示されています。

Q. 保護者として今すぐできることはありますか?

A. まず学校任せで十分かどうかを現状のデータをもとに判断することです。その上で、民間スクールへの通塾、ScratchやCode.orgなど無料ツールを使った家庭学習、PTAや学校を通じた授業充実の要望、この3つが現実的なアクションです。一つずつ始めれば十分です。

まとめ:アメリカと日本のSTEM教育の差、保護者にできること

アメリカのSTEM教育は「週2回が当たり前」ではありません。格差や課題はアメリカにも確かに存在します。それでも日本と決定的に異なるのは「専任スタッフ×専用ラボ×独立した時間枠」という役割分担の設計です。この仕組みがある学校では、担任が多忙でも週1回程度のSTEM教育を継続できます。

日本は必修化という制度は作りましたが、独立した教科にせず、専任の人材も置かず、結果として担任任せの年1〜2回という実態が続いています。問題は現場の先生ではなく、設計そのものにあります。

ここまで読んで、少し焦りを感じた方もいると思います。それは正しい感覚です。ただ、難しく考えなくていいです。まず現状を知ること、そして子どもに合った学びの機会を一つ探してみることから始めれば十分です。

私たちくむすたは、学校教育を補完する形で、小学生が継続的にプログラミングとAIを学べる環境を提供しています。週1回の継続学習で、思考の積み上げをサポートします。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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